伊藤穰一さん、林信行によるパネルディスカッション「起業家精神、起業支援とベンチャーキャピタル」メモ


このエントリーをはてなブックマークに追加

2011/11/01に行われたGoogle Developer Day 2011に参加した。今回は私が見た講演の中から、伊藤穰一さん、林信行によるパネルディスカッション「起業家精神、起業支援とベンチャーキャピタル」のメモを公開したい。

伊藤穣一さんは、今年4月にMITのメディアラボの新所長に選ばれた。そのときにこの紹介記事 ( Angelgeek: 日本が誇るエンジェル投資家 伊藤穰一(Joi) )にたどりつき、その一筋縄ではいかない経歴に驚いた覚えがあった。そんなわけで今回のパネルディスカッションも楽しみにしていたのだ。実際の講演も、期待に違わず大変刺激的だった。以下のメモでは、書き間違い・聞き間違いなどにより内容やニュアンスが変化している可能性があるが、ご容赦いただきたい。また文に脈絡がないのはメモをうまくとれていないせい。下手に思い出して補完するよりはそのままのほうがいいと判断した。多分そのうち動画が発表されるので、正しい内容はそちらでご確認を。

(2011/12/22追記) 動画が公開されました

伊藤穣一(joi):
企業のコストは昔より下がった
昔はすべて自分でやらなければいけなかった
今はネットワークの部分はfacebookで、など既存のものをいろいろつかえる 
今はアントレプレナーとしても良い時代。

林信行スマートフォンがでてきてから、世界に打って出るんだという人が日本にも出てきた
例1:twitterの構文を解析して絵文字をつけるベンチャー
例2:浮川さん(ジャストシステム)。日本語入力を作った人。今またベンチャーを始めようとしている
スタイラスで書いた文字をそのまま記録、場合によっては変換
 日本語の予測変換は海外でもニーズがある 世界に売れる
 
joi:
(注目ベンチャーは?と訊かれ)  
East sideに注目。ハードウェア系とかに強い。
Westではハードウェアをつかうものはやらないとか、大企業と組まなければいけないものとかはやらないという弱点がある
また、Westでは技術を標準化することには消極的。すでにスタンダードになっているものは積極的に使うのに。たとえばfacebookもそう。
いまだにソーシャル系の統一的なプラットフォームがない。(?)
9月にメディアラボの所長になってから、メンターはやってるけど投資はストップしてる。
日本でのベンチャーの弱みは文系理系がわかれているところ。
シリコンバレーではエンジニアとデザイナーのしきいが低い。日本はそこが残念。
デザインとエンジニアリングは突き詰めれば同じ。
どちらかだけを教えようとするのはもったいない

林:
日本だとエンジニア系のパーティーにいくとエンジニアばっかり、デザイン系のパーティーに行くとデザインの人ばっかりになりがち。
日本の場合でも、東と西で文化が違う。大阪発のタブレットアプリは割り勘計算機(?)などついていて気が利いている。東京だと、新しい機能がでてきたからそれを使ってみよう、となりがち。
 
Joi:
東京のユーザーはすごくこだわりが強く難しいターゲット。東京でサバイブできるのは強みになる(?)
日本のインターネットは独自の文化ができすぎていて、トランスレートするのが難しい。しかし一部の面では世界に出ていけるものもあると思う。2chに対する4chanみたいに。
昔ブログを日本に紹介したときに、「日本にはすでに日記文化があるので、日本では流行らない」と叩かれた。しかし、ブログはRSSなどのしくみが共通化されているのが日記と違った。日本の方が文化的には先だったが、スケーラブルにするというところが弱かった。
政治的な発想でソフトのアーキテクチャをやらないと。エコシステムの中での自分の位置づけや誰と組むかなどをポリティカルにやるのが必要。Apple, Google, Facebookとかは、いろんなレイヤーで組んだりライバルだったりする。
 
林:
日本でベンチャーをやっても、そもそもお金がはいってこない問題がある。仕方なく下請けをするが、 そちらにエネルギーを吸われてしまう。また、日本のドメスティックなライバルにこだわってしまい、海外に目がいかないのも問題。これは大企業でもそう。
 
Joi:
日本は中途半端にマーケットがでかい。海外だとすぐにシリコンバレーを目指す。  日本は居心地が良すぎるのかも。 
シリコンバレーもバブルっぽい(?) みんな移っちゃうのが残念。
 
林:
シリコンバレーといっても、面白い企業はサンフランシスコに移りつつありますよね
 
Joi:
はっきりいってシリコンバレーにはあまり文化がない。サンフランシスコのほうがある。NYにはもっとある。だんだんコンテンツ寄りになってくると、シリコンバレーからサンフランシスコに移りたくなる。デザイナーはシリコンバレーに住みたがらない。
 
Joi:
(自分について訊かれて(?))
アーリーアダプターシリコンバレーに投資していた頃はITバブルがすぎたころだった。 自分が楽になると学びが減る。毎日同じ仕事を繰り返す人生は嫌。少し違和感のある環境に身をおきたい。中近東とか。 

最初の10年間は一度もうまくいかなかった。何社もおとしてるけど、経歴に乗るのは5社とかなので。孫さんも失敗だらけだけどたまにホームランを打つ。

早く失敗をすることが必要。家族がいないうちに失敗した方がいい。必ず失敗する。一度も失敗していないやつには絶対投資しない。そういうやつが失敗するとたいてい爆発する。 電話しても逃げたりとか。子供は早めに怪我したほうが丈夫に育つのと同じ。
 
MBAはビジネスを勉強する。しかし実際にビジネスするのとは全然違う。とにかく早く失敗したほうがいい。 
 
林:
浅い段階でこれは違う、というやつがいる
 
Joi:
そもそも向いてないやつがいる。そういうやつは失敗しても学ばない。
危機になった時に本性がでる。失敗したときにちゃんと覚えた奴とか、責任をとった奴とか2,3人は、他のところに紹介する。
 
僕が信頼しているVCは10人しかいない。駄目なやつはそのサークルから排除される。サークル内で評判が回るので。ちょっとやくざ っぽいけど。
 
日本だと投資家同士のネットワークがまだ発達していない。ネットワークがすぐリセットされるのがもったいない。 
 
(新しく輪に入るためには?と訊かれて)  
カンファレンスに参加する。 同級生や先輩などを通じてネットワークに参加する。無理やり自分のところにプレゼンしようとして来るとちょっと引いてしまう。どこかネットワークに入るべき。セレンディピティー、偶然性も重要。まず人間関係。投資家でなくても、面白い人でネットワーキング 。少なくても、自分のことを分かってくれている人。いろんな信頼関係を作ればいずれ実りがでてくる。ネットワークを作るのは自分の責任。
 
林: 
自分がソーシャルなタイプでないと考えたら、そういうパートナーをみつけるのもいい。 
 
Joi:
ソーシャルじゃないけどGeekという面白い人どうしの不思議な雰囲気で盛り上がるのもいいんじゃないかなあ。オライリーのキャンプなど。
 
Joi:
(メディアラボはどんなところか?と訊かれて)
25人の先生がいる。同じフィールドの先生はいない。
とにかくものを作り表現するところ。 自分の学問にこだわらない。学生は3つ4つ関係ない趣味をもっていたりする。
企業スポンサーが70社いて、お金が真ん中にプールされている。
好きなことができる。誰かがやっていることはやらない。流行ったらやめる。ひねくれものの集まり。

Joi:
(なぜ中東に注目しているのか?と訊かれて)
中東にはアラブ語を話す人が数億人。若い。○○(国名失念)では25歳以下が人口の半分。若い人たちというのは重要。
 
Joi:
(最近ソフトの分野での特許抗争が話題になっている。若いソフトベンチャーは特許に対してどんな戦略をとるべきか?と訊かれて)
特許は分野による。ソフトウェアの場合、スタートアップの時にパテントを取ろうとしているなら何やってんだと思う。
特許で守るには1000万くらいかかるのでバランスがおかしい。ソフトウェアに特許は良くないと私は思う。
バイオロジーとかだと特許は必要になってくる。
 
林:
昔日本に、快適に睡眠するのを助けるアプリを作るベンチャーがあった。
「よく眠れます」などと謳うと薬事法にひっかかる恐れがあるので遠慮しがちに効能を謳っていたら、アメリカにとられた。
アメリカみたいにルールすれすれでいく精神が必要。
 
Joi:
訴えられるくらい 過激なことをやってないと。権威を疑って自分で行動する精神が日本人には弱い。
昔、インターネットはだめだ、っていう法律学者も日本にはいた。